1992年7月23日の布施混声合唱団『演奏会だより(第6号)』から転載(一部加筆修正)する。

 

 

たまたま買ったレコードで

「タリス・スコラーズ。今でこそ世界的にも超メジャーな存在であるが、あの時はまだわが国ではほとんど知られていなかった。1981年頃、偶然、心斎橋の日本楽器(現ヤマハ)の外盤コーナーで見つけたLP(当時CDはまだなかった)は、Gimellレーベルとして彼らが活躍するよりも以前のレーベル(EMI傘下のCLASSICS FOR PLEASURE)であった。

帰って、早速聴いてみた。それは、今まで聞き慣れていたどの合唱曲の録音とも違う、透き通るようなピュアなトーン、人声とは思えない振幅の大きい自在な表現力。小生はまるで自分だけの宝物のごとく、何度も繰り返し聴き、やがてGimellレーベルで出始めた彼らのLPレコード、CD輸入盤を集め始める。

前述のLPは、実はイギリスでベストセラーとなった彼らのデビュー盤(1980年録音・発売)であった。その商業的成功により、彼らは自らのレーベル『Gimell』を持つことができたのであった。」

 

だんだん知られ始めて

「やがて、「レコード芸術」誌の海外盤試聴コーナーでもタリス・スコラーズのLP・CDが紹介され始めた。正直言って、うれしさ半分、くやしさ半分であった。秘宝が公にされるような複雑な思いで、彼らを賞賛するこれらの記事を読んだものだ。

そしてついに、彼らのジョスカン「Missa Pange Lingua(他ミサ1曲)」が1987年度英グラモフォン大賞を、わが国では翌年にレコード・アカデミー賞を受賞。

タリス・スコラーズは1989年、1991年の2度日本へやって来たが、幸運にもいずれも聴くことができた。それはLPやCDよりも更に素晴らしかった。初来日の時は、憧れの人とやっと逢えたような思いを強く持ち、万感胸に迫るものがあった。」

1989年6月

第1回  日本公演プログラム(表紙)

1991年1月

第2回  日本公演プログラム(表紙)

 

3度目の来日を前に

「彼らのベスト・レコード2枚を小生が選ぶとすれば、ヴィクトリア『レクイエム』の1枚と、前述のデビュー盤(アレグリ、マンディ、パレストリーナのカップリング)である。前者は3度目の来日(1992年9・10月)の際に演奏予定であるが、家内に対して「オレの葬式の時はこれをバックに流してくれ」と言わしめたほどの名演奏だ。後者の中では、マンディの『Vox Patris caelestis』が、聴き込むにつれて小生を魅了し、遂にはすべての合唱レコードの中でもベスト5に入るほど好きなものとなってしまった。」

1992年9・10月

第3回  日本公演プログラム(表紙)

 

※上記は1992年7月  布施混声合唱団『演奏会だより(第6号)』より(一部加筆修正)